- その1「スサノオの誕生」
- その2「スサノオの成長」
- その3「真っ暗になった高天原」
- その4「オロチ退治」
出雲神話ものがたり 「スサノオの成長」
スサノオの成長
イザナキのみそぎの時に、鼻から生まれたスサノオは海を治めるようにとイザナキから命じられていましたが、大きくなってあごひげが長くなるようになっても、子どものように泣き叫んでいました。そのため、青々とした山も枯れはてるほどになり、また、うごめきだした悪い神々があふれ出し、あらゆる物の災いが起こり広がってくるようにまでなりましたが、海の国を治めようとはしませんでした。
イザナキは、困り果てて泣きわめくスサノオに向かって「なんで海の国も治めずに泣いてばかりいるのか」と聞かれると、「私は母の国へ行きたくて泣いています」と答えました。これを聞いたイザナキはたいそう怒って、おまえはこの国に住むことはならんと言われ、追い出されてしまいました。
スサノオは、それなら高天原の姉アマテラスにわけを話してから出て行こうと考え、高天原に上りました。
そのとき天地は地震のようにゆれ動き地鳴りがしました。その音をアマテラスが聞きつけ、弟スサノオが高天原を奪い取りに来ると思い、男の姿になり、背と腹に矢筒をつけて千五百本の矢を入れて弓を握ってスサノオを待ち受けました。そして、「何用あってここへ来たのか」と、怒りにふるえて聞いたのです。
スサノオは、私には高天原を取ろうなどという心はありません。父神に怒られ葦原の中つ国から追い出されたので、お姉さんにお別れに来たのですと言ったけど、姉は信用せず、あなたの心が清らかなことを何かで証明しなさいと言ったのです。そこでスサノオと姉アマテラスは互いに神のお告げを聞く儀式(ウケヒ)をすることになりました。
まずアマテラスがスサノオの剣をもらい受け、三つに折って口の中に入れ、バリバリとかんで息と一緒に吹き出すと、三人の女の神様が生まれたのです。次にスサノオがアマテラスの左の髪に結んであった玉飾りをもらい受けて口の中に入れてバリバリとかんで息と一緒に吹き出すと一人の男の神様が生まれました。次に右の髪に結んであった玉飾りをもらい受け、口の中でバリバリとかんで吹き出すと一人の男の神様が生まれました。また、次に頭に巻いていた玉飾りをもらい受け、口の中でバリバリとかんで吹き出すと、また、一人の男の神様が生まれました。次に左の手に巻いていた玉飾りをもらい受け、口の中でバリバリとかんで吹き出すと、もう一人、男の神様が生まれました。最後に右の手に巻いていた玉飾りをかみ砕いて吹き出すと、また、男の神様が生まれました。スサノオはあわせて五人の男神を吹き出したのです。
アマテラスは五人の男神は自分の玉飾りから生まれたのだから私の子どもだと言い、三人の女神はあなたの剣から生まれたからあなたの子どもだと言って分けたのです。このことからスサノオは、おだやかな女神を生んだという事は私の心にやましいことがなく清らかだという証拠だと言い、姉アマテラスに納得をさせました。
そして、高天原で暮らすことにしました。
スサノオの暮らしぶりは、はげしくむちゃくちゃで、田の畦道をこわし、溝を埋めたりしました。また、アマテラスの御殿に上がりこんで糞をして、それをまき散らしたり、それはそれはひどいものでした。ところが、このような行いはますますはげしくなり、神様たちの着物を作る機織りの家の屋根に穴をあけて、馬からはぎ取った生皮をその穴から中へ投げ込んだのです。
機を織っていた女の人たちの一人が投げ込まれた生皮を頭からかぶってしまい、驚きと恐さで機織り機から転げ落ちて、織機の道具が体に刺さって死んでしまいました。それを見たアマテラスは、スサノオのあまりの乱暴に驚いて天の岩屋へ入ってしまい、しっかりと戸を閉めてしまいました。このため高天原は真っ暗闇になってしまいました。スサノオはとんでもないことをしてしまったのです。高天原へ来てからの乱暴は、まさに荒ぶる神そのものでした。
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- その2「スサノオの成長」
- その3「真っ暗になった高天原」
- その4「オロチ退治」